SSとやらを書いてみる。

※鬱展開につき春香ファンは覚悟を決めて読んでください。











「Reset.」

3月/5週目
昼前。オレは今日もプロデュース中の千早の海外進出に向けての書類を休日を返上してまとめている。千早はいつも通りレッスン場で勉強中だ。
「自分の歌が国境を越えて評価されるかどうか、試してみたいんです。」
あの日。あのドームでのライヴの日。彼女はオレに言った。彼女の覚悟と実力なら充分に海外でもやっていけるだろう、と、オレも賛成した。本来ならオレも一緒に着いて行ってやりたいところだが、大きな会社にも関わらず人手不足な為、オレは他のアイドルたちのプロデュースも掛け持っている。千早も事務所のコトを気遣ってか、「一人でも大丈夫です。安心して下さい。」と快諾してくれた。

亜美と真美は双子デュオとして再デヴュー。真は王子様アイドルとして受け入れられる事にも抵抗を感じず頑張ってくれる様になったし、雪歩も人前に出ることへの苦手意識をある程度克服して、真とのカップリングで王子様とお姫様のイメージで人気を博している。やよいと伊織は相も変わらず二人で仲良く活動している。律子とあずささんもランクアップを重ね、ランクBまで登り詰めた。ドームライヴも遠くない。みんな、オレと共に活動期間を過ごし、ここまで来た。アイドルとしての輝かしい道を今でも歩き続けている。たった一人を除いては…。


「おはようございまーす♪」
そう言って元気そうにドアを開けて事務所に入ってきたのは春香。天海春香だ。
P「あれ?春香、今日はどうしたんだ?なんかずいぶんおめかししてるみたいだけど…」
春香「おはようございますプロデューサーさん。なんだか今日は眠そうですよ?」
P「あ、あぁっ、ちょっと今やってる仕事が、ね。」
聞かれたくないのか、オレの質問は軽めに流されてしまった。
春香「…もしかして、千早ちゃんの海外進出のアレですか?!」
嬉しそうに、どこか寂しそうに春香は聞いてくる。
P「まぁね。」


彼女は、オレが唯一トップまで連れて行けなかった、元・アイドル。
ランクCまでは行ったもののオレの力不足でIU予選に、落選した。噂には聞いていたが、IU予選で敗退したアイドルへの仕打ちは酷いものだった。スポンサーや、出演を予定していたTV・ラジオ番組のオファーは全て無くなり、春香はアイドルとしての道を閉ざされたのだった。仕事が無い時点で事務所からは追い出されるのが普通なのだろうが、うちの社長はアイドル候補生達の事を大切にしてくれているようで、今でも春香には出入りを許可している。月に2〜3度顔を出しては事務所の皆に手作りのお菓子を差し入れしたりしている。


P「で、今日はどうしたんだ?」
春香「…」
P「ん?」
春香「…あの、これ、食べて下さい。お弁当…。」
P「良いのか?悪いね。今月ピンチだったんだw」
随分と気合の入った手作り弁当だった。これはどう見ても特別な相手への気持ちが入っているなぁ、と思って聞いてみた。
P「春香、もしかして今日、デートだったんj」
春香「しっ知りません!良いから食べて下さいよぅ!」
P「どうした?彼氏と喧嘩でもしたのか?w」
春香「……タハハ…。」
少し苦笑いしながらそっぽを向いてごまかす春香。


彼女はオレの手元を離れて普通に学生として過ごしている。春香程の魅力を持つ女の子をその辺の男子が放っておく事も無く、今では恋人もいると言う話は前から聞いていた。春香も春香で幸せそうに話しているので、これはこれで彼女にとっても良かったのかもしれない。







IU予選の日。オレが傍に居てやれなかったこともあってか、春香は不安に打ちのめされて、ミスを連発。それでも合格者とは僅差での勝負となった。オーディション終了後に会場について結果を知らされたオレは真っ先に楽屋の春香の元へ走った。そこには大粒の涙を流す春香がいた。謝っても謝りきれない自分が情けなかった。春香に胸を貸す事しか出来ない、こんな自分がひどく憎かった。その後、春香は事実上の引退、芸能界をあとにした。






談笑しているとすっかり日が暮れて、仕事が手について無いことに気づく。そこでまた千早の話題になる。


春香「海外、遠いなぁ。寂しくなりますねぇ。」
P「春香は千早とは長い間一緒だったからな。」
春香「私も一緒に着いていきたいです!…なんちゃって!エヘヘ…」
P「ハハハ…」
春香「…」
P「…」

しばらくの間のあと、春香が呟いた。

春香「…………サン…ウシテ…」
P「…ん?」
春香「プロデューサーさん…どうして…?」
うっすらと涙を目に浮かべる春香。
春香「どうして私だけ、こんな…っ」
P「春香…。」

誰もいない事務所で、その内泣き出す春香に、オレは何もしてやれない。もう、オレ達は「プロデューサーとアイドル」ではないからだ。春香の泣き顔を見ると自分が責められているように感じる、いや、実際そうなのだろう。こんなにもたくさんのアイドルをこれだけ売り出して成功を収めているオレが、唯一約束を果たせなかった、たった一人の女の子。きっと彼女はオレを恨んでいるだろう…。








彼女が落ち着いたところでオレはひとつの決心をした。







春香「ごめんなさい、プロデューサーさん。わたし、こんな…」
P「…」
春香「今でもたまにあの時のコトを思い出しちゃって、どうしても悔しくって、それで…」
P「…」
春香「今日はこれで失礼しますね…」
P「…なぁ、春香。」
春香「はい?」
P「もう一度全部やり直さないか?」
春香「えっ?」
P「オレと、春香で。もう一度この世界をやり直そう。」
春香「ど、どういうことですか?」
P「オレは今の自分を失うのが怖かったのかもしれない。」
春香「…プロデューサーさん?」
P「でも、それじゃあ春香を傷付けてしまったままで…。だから、もう一度やり直そう。もう一度、伝説を作り直そう。春香の、いや、春香達の伝説を!」













4月/1週目
オレはとある雑居ビルの前に立っていた。
就職に悩んでいたオレを街中のゲーセンで突然全身真っ黒の自称芸能界関係の事務所社長がスカウトしてきた。
その事務所ってのがここらしい…が、お世辞にも大手とも見れない事務所の外観に少々の不安を孕ませながら階段を一歩ずつ上りだす。
事務所を開けるとそこには一人の少女が立っていた。
事務所に所属する女の子だろうか…目が合ったので何か声を掛けなければ!と思ってこんな事を口走った。



運 命 の 出 会 い を 信 じ て る ?



*1 *2
*3

*1:参考にさせて頂いた動画

*2:TVドラマ「プロポーズ大作戦」も少しだけ意識してみました。

*3:いい訳とかはまた後日機会があれば。